前回までの内容・・・
これまで、ステキな大人になり幸せに暮らすための重要な力として世界的に研究されている「非認知的能力」を紹介しました。この力はテストでは測れない力の一つです。その力のなかでも「自制心(自分をコントロールする力)」の身につけ方について書いてきました。
「非認知的能力」はどうやってつける?~まとめ~
「非認知的能力」について、今回で最後のまとめにしていきたいと思います。
僕は「非認知的能力」次の6つに分けました。
まずは「無条件の愛情」が大切
全てにおいて重要なのは、「無条件の愛情」でした。ありのままの自分を身近な大人に受け止めてもらえていないと、認めてもらうことに必死で、他のことにはなかなか関心や気持ちがいきません。信頼でき、安心できる大人が身近にいてはじめて、他のことを吸収する余裕が出てくる、ということのようです。
「好奇心のあることに没頭する(とことん遊ぶ)」ことの価値
次に大事なことは、「好奇心のあることに没頭する(とことん遊ぶ)」です。【Grit】は、自分の力で最後まで何かをやり抜く経験が重要ですが、途中であれこれ手や口をなるべく出さず、自分で納得のいくまでやることが大事だそうです。その経験が、「私はできるんだ」という自己肯定感【自尊心】を育みます。【自尊心】がしっかりしていると、前向きに物事を考え、「次はこうしよう」と考えられるようになります【ポジティビティ】。大人もそうですが、自分が夢中になっている趣味は、どうやってやろうかとか、どうやったらもっとうまくいくかとか、考えますよね。子どもの遊びも同じことが起きて、あれこれ工夫が始まります【創造力】。
さらに、ここに他者が加わるような状況があるとよりよいように思います。小さい子であれば、例えば砂場で遊んでいたとして、誰かと場所を分かち合うことになったり、協働で同じ大きなものを作ろうとなったりと、協力したり対立したりします。他者と関わることで、自分の感情と向き合うことになります【自制心】し、うまく折り合いをつけることも学びます【社交性】。どちらかが我慢するだけでなく、互いに納得できるwin-winな遊び方を考えるきっかけになります【創造力】。
ですが、特に小さいときであれば、これらの遊びは本人の関心(≒好奇心)のあることでないと難しくなります。関心のないことであれば、最後までやり抜いた達成感は得られにくいですし、そもそも関わって対立したら「離れて終わり」になります。自分の感情と向き合うこと【自制心】なく、回避したりやめたりすることで解決としてしまいます。「やりたい!」と思えることで他者と関わるからこそ、いろんな問題や葛藤を乗り越える気持ちが維持でき、乗り越えたから力が付いてくる、ということです。ですから、「好奇心(≒関心)のあること」がとても大事になります。
今のお子さんの年齢に当てはめてみると、どうですか?何か好奇心をもって取り組めそうなことはありますか?
その他にも、身に付けるための方法はたくさんありますが、紙面の都合もありますので、興味のある方はこの先はまたネットや本などで情報を集めてみてください。
「ゲームはどうなんですか?」と質問が来そうですが、ゲームも効果的な場合が多々あります。特に他者と関わるオンラインゲームやソーシャルゲームは、互いの利益(関心)が一致しているので、効果があるという研究結果もあります。
個人的には「キャンプ」はかなりおすすめです
僕のおすすめは、初めて会う仲間とともに過ごす、宿泊を伴う野外体験です。「環境教育」というより、「冒険教育」という、自分自身や他者と向き合っていくジャンルのものです。アメリカではサマーキャンプとして数週間から1か月単位のものが広く行われていますが、それほど教育的効果があるからです。不自由な生活で、他者との共同生活。そして勇気をもって一歩踏み出さなければできないチャレンジ。でも、楽しいこともたくさんつまっている。寝食を共にした仲間との思い出は、日常生活に戻っても持続する自尊心も育みます。今年はなかなか難しいですが、チャンスがあればいかがでしょうか?冬のキャンプもあります。
最後に、僕の願いです
僕は子どもたちに
「自分から行動することで、今よりもうちょっと幸せな家族、幸せな友人関係、幸せな社会を築けるようになること」
を願ってこの仕事に携わっています(ミッションステートメントというやつです)。
そのために以下のような非認知的能力は不可欠だと思っています。
- 自分の苦手を知り、自分の得意なところで苦手なところを補う。気持ちを上手にコントロールして、いつも抑え込むのではなく、適切にコントロールする。
- 最後までやりきったと思える経験をもとに、粘り強くチャレンジできる。
- 互いが納得できるWin-winなアイデアを考えられる創造力をもつ。
- 自分の気持ちも相手の気持ちも、自分の言葉も相手に届くように伝えられ、相手の言葉も誤解なく背景を想像して聞いてあげられる。
- 前向きで次に進んでいける。罪を責めるより、次はより良くしていこうとする気持ちを尊重できる。
- 人を愛し愛され、自分らしさが多様にある(○○が好き、○○が得意など)。得意なところはどんどん伸ばし、得意なことが人に誇れるほどに伸びている。揺るがない自尊心。そんな人はきっと、人からも信頼されるでしょうし、相手に任せることもできると思います。
長くなりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
また何か子どもの育ちに関する情報がありましたら、お知らせしますね!